音楽制作を始めた当初は、自由に気分の赴くままに曲を作るのがよいです。ですが、何曲か作っていくうちに、なんとなく同じような曲になってしまったり、アイデアや着想が足りなくなったりしてくると思います。また、何年も音楽制作を続けているのに、作っている曲があんまり成長していないような感覚になることもよくあります。そんなときに実行すべき、現状打開方法をいくつか紹介します。
1つ目は、耳を鍛えるということです。
曲を作ること自体でも少しずつ耳は成長していきますが、西洋音楽の調性感(音感)に慣れたり、曲を聴いたときにコード感やメロディ感が養われてくると、徐々に自身の曲のOKとNGの線引がからくなっていきます。耳の性能は音感だけに留まりません。曲を聴いたときにベースのラインに気がつく、把握できるといったことも、耳の能力です。耳の性能が上がれば、それだけ得られる情報量が増えますし、ジャッジも厳密になりますし、人様の曲の把握も素早くできるようになり、とても有益です。音楽を聴く際の楽しみ方自体が変化していくことでしょう。耳を鍛える方法は、「集中して何度も同じ曲を聴く」「自分で真似してみる」です。つまり、耳コピが最適な手段と言えます。
2つ目は、引き出しを増やすということです。
例えば、曲のジャンルごとにお約束としてやられていることを自分でもできるようになったり、アイデアや着想を増やすために人様の曲からエッセンスをもらったりします。曲を作るときにいつも似たような曲になるということは、同じようなアイデアを使いまわしているからに他なりません。また、何も考えずに曲を作るとノンジャンル感が出る曲になってしまいますが、ジャンルごとのお約束、時代背景のお約束、◯◯さんっぽいお約束などを理解したうえで取り入れることで、曲のレベルは飛躍的に上がります。引き出しを増やす方法は、「とにかくインプットする」「自分で真似してみる」です。ただし、ただただインプットだけ増やしても、集中してきちんと情報を得なければ意味がありません。ということで、この場合も、耳コピが最適な手段と言えます。慣れてくると、単純に人様の曲を聴くだけでも得られるものは増えていきます。しかし、耳コピした方は共感できると思いますが、100回同じ曲を聴いても、101回目には新しい発見があるものです。つまり、これほどの集中力で取り組まなければなりません。人様の曲から1つエッセンスを貰えれば、それから芋づる式に色々調べていくこともできます。例えば、80年代のアメリカ西海岸のロックバンドではこういうエフェクトの設定をやっていた、なんていうことがわかれば、歴史や地理、民族的な側面、さらにはその曲を作った人が「何を参考にしていたのか」、までわかってきます。
3つ目は、DTM技術を磨くということです。
結局のところ、打ち込み主体で曲を作っていることと思います。生の演奏を聴いたときの音の生々しさを、音源で再現したい方も多いことでしょう。一方で、打ち込みではどこまで行っても生のような表現力にならないことに直面している方も多いことでしょう。例えば、ベロシティやエクスプレッションでできる表現は限りがありますし、音源のキースイッチにも限界はあります。エフェクトのトレモロで笛などを揺らす場合を考えてみても少量でなければ嘘くささが出ますし、ピッチベンドもきれいには書けません。落とし所としては、生の演奏のようにはならないけれど、打ち込みの音の機械っぽさを低減する程度に各種パラメータが使える程度だと考えて、生の演奏を真似したり、カチッとした音に「曖昧さ」を加える感じでパラメータを書いてみたり、さらには生ではできない演出を検討してみるといいです。DTM技術の向上を目指す方法は、「既存の演奏をそっくりそのまま自分が持っている音源やプラグインで再現する」です。つまり、これも耳コピですね。やはり、完全に再現することは難しいのですが、それでもDTMが得意なことと苦手なことが明確になりますし、嘘くささを減らす方法が得られます。現在では、打ち込み丸出しの曲であっても、十分市民権を得るようになりました。また、特殊なプラグインによる効果がトレンドになったりと、打ち込み技術だけというわけでもなくなりました。ですので、作りたい曲のジャンルに応じて、幅広く情報収集する必要があります。
以上、簡単に伸び悩み打開方法について紹介してみました。こうしてみると、「耳コピ」は避けては通れないみたいですね。耳コピが趣味になるほどたくさんコピーする必要はありませんが、ちょいちょい伸び悩んだときはきっとお世話になると思います。耳コピを楽にする方法などは、後ほど別途紹介します。