当アトリエでは、安くお手軽に音楽制作環境を整える方法を大まかに紹介します。ただし、詳細な情報の記載は意図的に避けます。なぜなら、当アトリエの方法を見様見真似で誤解して実行し、それで制作に失敗した場合、当アトリエでは責任がとれません。せっかくがんばって自作したのに失敗してがっかりされるのも、当アトリエとしてはとても残念です。そこで、以下の記事を読んで自分でも制作してみたいという熱心な方がいらっしゃれば、お気軽にお問い合わせください。有料アドバイスにはなりますが、完成までサポートいたします。ちょっとした質問であれば無料でお答えします。
防音室を導入しようと思ったとき、まずは市販のユニット防音室の性能がどの程度なのかを把握しなければなりません。大手ユニット防音室メーカーの商品サイトを見ると、Dr-35やDr-40のものが売っています。実はユニットタイプの防音室では、このDr-40あたりが性能限界になります。当アトリエで紹介する防音ブースのDr値もDr-40あたりになります。
では、Dr-40として売っているユニット防音室はどれくらいの音量まで耐えられるのでしょうか。まず、ピアノやドラムは無理です。おそらく、サックスなどの管楽器も無理です。最近流行りの動画配信や歌の録音としては使える範囲です。音楽制作として、そんなに大きな音を出さないのであればギリギリ使えます。ホームシアターもギリギリ大丈夫だと思います。
ピアノやドラムの音を止めたいということであれば、ユニット防音室ではDr-60(TLD60)以上が目安になると思います。ですが、この値はユニット防音室では現実的に無理です。残念ではありますが、ピアノやドラムのための防音をしたいのであれば、郊外に引っ越す、地下付き物件を探す、マンションを購入して一室丸ごと防音する(これは1ランク下の選択肢です)、これらのどれかを選ぶことになると思います。このあたりは当アトリエで紹介するDIYの範疇を超えますので、防音工事の業者さんとご相談ください。
なぜDr-40あたりが性能限界かについてお話します。Dr値を測定したグラフを見ると、周波数が125~4000Hzまでしか記載されていないことがわかります。まず、これを超える周波数については、人間の耳に敏感な周波数のピークが4000Hz前後にあり(当ラウドネス曲線を参照のこと)、4000Hzより上は感度が鈍ってきます。またDr値は理論上右肩上がりでよくなります(実測値ではどこかで頭打ちします)。ですので、4000Hzまでがわかれば十分なわけです。そして、125Hzを下回る周波数については、もはや界面で音を透過させないというより、駆体の振動として伝わっていきます。したがって、Dr値を見ても低音の伝搬を止められるかどうかは判断できません。Dr値と対になって登場するのが、ΔL等級やL値(軽量衝撃音(LL)、重量衝撃音(LH))です。
L値は小さいほど性能がいいのですが、これを下げていくためにはユニット防音室を制振する必要があります。いわゆる浮き床構造にし、防音室の振動が床を通じて、さらには建物の駆体を通じて他のお宅に伝搬していくことを抑える必要があるのです。この際、DIYレベルでできる制振は界面の性能で言えばDr-40程度が限界であり、そのためユニット防音室全体ではDr-40が性能限界としての目安になります。仮に、防音室の壁だけをDr-60にできたとしても、床の制振がこの性能に追いつかないので、結局Dr-40と同じ程度の低音は漏れてしまう、そのためDr-45以上の界面を作る意味がない、という判断になります。仮に本格的な制振をしようとした場合、床そのものに手をいれることになりますから、費用は跳ね上がりますし、法令やマンションの規約も考慮しなければならないため難易度が跳ね上がります。
以上から、DIYレベルではDr-40の防音室を作ることが現実的です。一方で、これ以下の性能を目指す必要はありません。Dr-35でも、Dr-30でも、DIYの工程はほぼ変わらないので、コスパが悪くなります。よく簡易防音室という名前で、強化プラスチックや段ボールでできたものがありますが、率直に言えば、導入する意味はありません。カーテンや衣類で覆うだけで高音は低下するわけですが、こういう商品もそれと同じ程度の性能でして、肝心の低音はほとんど防げません。低音を防ぎたいと思えば、きちんと重量をともなった防音室を作る必要があります。
当アトリエで紹介する防音ブースの現実的なサイズは2.5~3畳です。ホームセンターに行ってみると、合板や石膏ボードが1820mm*910mmというサイズで売っていること、長さ1820mmの木材が多く売っていることがわかります。これ以上長い木材もありますが、実際に部屋に搬入してDIYをしようと思うと、やはり長さ1820が限界に思います。
したがって、防音室のサイズは1820*910を基準に決めると制作が楽です。つまり、1820*910サイズを横に2~3枚並べることになります。3畳より広い防音室にしたい場合は、1820を超えてしまいますから、天井として合板や石膏ボード1枚を壁から壁へ渡すことができなくなります。そうすると、1820よりも長い木材が必要になりますし、DIYでは強度的に耐えられる天井を作るのに難易度が跳ね上がります。今回紹介するの防音室は2.5畳にしました。こうなってくると、もはや防音室と言うより防音ブースという感じなので、当アトリエで紹介する防音室は防音ブースと呼んでいます。
床から天井までの距離も1820を基準とします。背の高い方には窮屈かもしれません。防音ブースを置く元の部屋の天井がどれだけ高いかにもよりますが、1820よりも高くするのは、制作難易度が上がります。どうせ、防音ブース内では椅子に座りますから、この点は我慢しましょう。
質量則、コインシデンス効果、太鼓現象、千鳥間柱(千鳥スタッド)、浮き床構造、このあたりを理解しておけばDIYレベルでは十分です。YouTubeを見る限り、DIYレベルで千鳥間柱まで採用している動画は見つかりませんでした。ですが、それほど難しくはありませんので、DIYの範疇に含めています。そして、鉄則として覚えておきたいのが、
・界面は、遮音材と遮音材の間に空気層を設けるサンドイッチ構造にする
具体的には、
↓遮音材
↓木下地と吸音材(グラスウール)の空気層
↓遮音材
という積層構造を採る
・遮音材の重ね貼りは材料を変える
片面2枚貼りが妥当。それ以上はコスパが悪い
・遮音材の2枚貼りは、「表面は硬くて薄い材料、奥は重くて分厚い材料」にする
です。
質量則に沿えば、空気層を挟んで片面2枚の遮音材を使い、合計4枚の遮音材にするのが最もコスパがよいです。この性能を5dB上げるためには、倍の8枚にしないといけません。さらに性能を5dB上げるためには、倍の16枚にしなければならないというように、どんどん現実味がなくなっていきます。DIYレベルの場合、やはり4枚が妥当なところです。界面の構造は、チヨダウーテさんの「チヨダ間仕切壁システム」が参考になります。チヨダウーテさんでも4枚使用する方法を採用されています。公称値でTLD60を超えているものもありました。
質量則は理論的なものであり、実測値とは結構乖離します。それは、コインシデンス効果、太鼓現象があるからです。まず、コインシデンス効果は片面2枚の材料を変えることで、それぞれの材料のコインシデンス周波数をずらし、大きな損失が起きることを避けることができます。太鼓現象については、この減少を抑えるためと壁の遮音性能を上げるために、空気層の厚さ自体は最低100mmは必要であり、それ以下の厚さでは大した違いはありません。ここに吸音材(グラスウール)を入れると、比較的薄い空気層でも太鼓現象を抑えることができます。ただし、コインシデンス効果と太鼓現象を防いでも、遮音性能の実測値は質量則(理論値)を下回ります。
遮音性能を能動的に上げるためには、壁の間柱を千鳥配置にするとよいことがわかっています。こうすることで、界面の遮音性能は5~10dB程度上がります。DIYレベルでも簡易的に実現可能です。さらに言えば、ダブルスタッド工法という、外側の壁と内側の壁とで使う木下地と間柱を独立させる構造があり、これが最も性能がよいです。しかし、DIYレベルではオーバースペックです。なぜなら、壁をダブルスタッドにするのであれば、ドアも独立した2重構造にし、天井や床もそれに応じた構造にしなければ、結局性能の低い部分から音が漏れるからです。したがって、後述するような簡易千鳥間柱が現実的な落とし所になります。
DIYで作る防音ブースは、防音ブースの床を作り、その上に壁を立てて、その上に天井を載せるというような構造になります。簡易的に浮き床構造を採用するには、この防音ブースの床の下に防振ゴムを挟み、かつある程度の空気層を設ける方法が現実的です。そして、空気層には吸音材を充填します。
この他、業者さんであれば、吊り天井、床下の剛性を高めた制振、壁を床の上に立てず床と切り離す施工、専用の防音ドア、などの概念が入ってきます。これらは当アトリエのDIYではオーバースペックですから取り扱いません。
一般的に、ユニット防音室の空調管理には、防音室内にエアコンとロスナイ換気扇を設置します。
防音ブース内にエアコンを設置するには、元の部屋のエアコンを防音ブース内に移設したり、新しくエアコンを買う必要があり、面倒です。狭い防音ブースを作るわけですから、防音ブース内にエアコン分の出っ張りがあるのも不便です。また、エアコンも騒音源ですから、できれば防音ブースの外に置きたいところです。スポットクーラーを使う場合は、排気ダクトを元の部屋の外に出さなければ、部屋がどんどん暑くなっていき、クーラーの意味がなくなってしまいます。
そうなってくると一番楽な冷房管理は、既に元の部屋についているエアコンからの冷風を防音ブースに送り込む方法になります。防音ブースの壁の下の方に給気口を開け、そこに吸音ダクトをつなぎ、その口をエアコンの前に設置して、ゴミ袋等でエアコンの冷風を吸音ダクトの口に集める、これで2.5~3畳の防音ブースは十分冷えます。ちなみに、元の部屋が十分に冷えていれば、おそらくゴミ袋でエアコンの冷風を集めることも不要で、吸音ダクトを元の部屋に垂らすだけで十分だと思います。ですが、エアコンをつけ始めたすぐは部屋は冷えていないので、エアコンの冷風を集めるほうが効率がいいと思います。
この際、防音ブースには給気口に対して対角になるように、反対側の壁の上の方に排気口を開けます。ここに吸音ダクトをつなぎ、ダクトファンをつないで、強制的に排気します(第三種換気)。ちなみに、防音ブースにエアコンの冷風を送る給気口だけ開けても、防音ブース内はほぼ冷えません。空気の循環がないからです。それどころか、酸欠になってしまいます。そのため、必ず排気口は開けます。排気口は自然排気では不十分ですので、必ずダクトファンを使いましょう。
制作する防音ブースの床は、次の積層になります。
(上)
針葉樹合板
ラワン合板
木下地とグラスウールの空気層
ラワン合板
針葉樹合板
(下)
そして、浮き床構造にするため、さらにその下は次の構造になります。
防振ゴム
木下地とグラスウールの空気層
防振ゴム
(針葉樹合板)※今回、畳の上に設置するために硬い材料を敷いた
(ニードルパンチカーペット)※畳を傷つけにくいように緩衝材をして敷いた
元の部屋の畳
次に、この床の上に立てる壁です。積層は次のようになります。ドア部分もこれと同じ構造です。
(外側)
針葉樹合板
石膏ボード
千鳥間柱の木下地とグラスウールの空気層
石膏ボード
針葉樹合板
(内側)
この壁に載せる天井は次の積層です。
(上)
針葉樹合板
石膏ボード
木下地とグラスウールの空気層
石膏ボード
針葉樹合板
(下)
以上が前述の理論の話に基づいた、DIYでもできるレベルの現実的な落とし所です。おそらく遮音性能は、壁>天井>床であり、床の性能は少し低いです。石膏ボードは脆いため、床では使用していないこと、壁だけが千鳥間柱にできること、これらが理由になります。したがって、防音性能は床の性能が決定することになります。
前提として、このDIYで制作する防音ブースはユニットタイプの防音室扱いであり、「建築物」とはみなされません。したがって、ユニット防音室が規制されたり、守ったりするような法令はありません。しかし、関連法令にどんなものがあるかを知っておくことは望ましいと思いますので、周辺の関わりのありそうなルールを挙げます。ぜひ見ておきましょう。
まずは建築基準法関連から。
・【第6条】建築確認が必要な建築行為
ユニットタイプは増改築に当たりませんので、対象外です。
・【第28条】構造耐力上主要な部分の基準
ガイドライン的に言われている床荷重の基準は180kg/m²です。しかも、部屋全体での値であり、局所的な数値ではありません。当アトリエで紹介する防音ブースは4.1435 m²、約700kgです。これは大手メーカーのユニット防音室とほとんど変わりません。計算すると、約169kg/m²となります。ここに人や家具が載りますが、定常的なものではありませんので、だいたい基準あたりに収まります。ちなみに、これはただの推奨されるガイドラインであり、制限値ではありません。部屋全体で最低でも180kg/m²は耐えられる構造にしましょうという建築サイドの話です。巷で出回っているのように「耐荷重を180kg/m²以下にしなければならない」という話を信じた場合、アップライトピアノを考えれば単体で200kg/m²を超えますから、普通に設置するだけでもこの基準に引っかかることになってしまいます。ちなみに、本がたくさん入った本棚はさらに重いこともあります。ですが、実際に木造であっても床が抜けることはありません。当然、RC造であればさらに余裕です。
余談ですが、当アトリエでは木造の集合住宅にこのDIYの防音ブースを設置することは推奨しません。それは、木造住宅でDr-40のユニット防音室を置いたとしても、もともとの木造住宅の防音性能が低いため普通に音はお隣さんに聞こえてしまうためです。ですから、そもそも木造集合住宅への防音ブースの設置は想定していません。
・【第34条】居室の採光および換気
居室ではありませんので対象外です。ただし、換気については換気回数 0.5回/h以上(建築基準法施行令 第20条の7)を満たすことは考慮すべきです。この防音ブースではダクトファンによる常時換気を行います。
・【第35条】防火・避難の安全
火災時に逃げられる構造になっているかが書いてあります。これに則り、通路やベランダのある窓を塞いだりはしないように配慮するとよいです。
次に消防法関連。
・ユニット防音室は「建築物」や「防火対象物」ではないので、規制対象ではありません。
次に電気設備技術基準。
・この防音ブースでは電気配線を引き込まないので対象外です。電気配線を引き込むメリットはありませんので、照明はコンセントで使用するLEDライトを、電源は電源タップを防音ブース内に引き込むことを推奨します。電気配線を引き込む工事が必要な場合は、有資格者への依頼が必要です。
あとは、あるとしたら労働安全衛生法。これは防音ブース内で労働する際の話です。換気に関する項目がありますので見ておきましょう。
・労働安全衛生規則 第57条(密閉空間の換気等)
作業環境が「密閉された空間」で作業者が入る場合は、十分な換気措置や監視が義務付けられています。つまり、建築基準法と同じく、換気をしっかりしましょうというものです。
・労働安全衛生規則 第58条(作業環境の管理)
有害な空気や酸素不足の防止など、安全な作業環境の確保が必要です。これも安全性、今回であれば特に換気に関することです。
だいたいこのあたりです。簡単に言えば、換気をしっかりする、防音ブースで避難経路は塞がない、電気工事が必要であれば有資格者に頼む、防音ブースの荷重を気にする(耐荷重180kg/m²はただのガイドライン。実際はRC造ならこの2倍でも問題ない。DIYレベルの防音ブースが引っかかることはまずない)、という感じですね。
ちなみに、市販のユニット防音室には3tもあるものが出回っています。韓国で製造されたものを日本ではサウンドジャパンというメーカー名で販売しています。なんとユニット防音室ですがDr-55ほどあるようです。RC造で設置場所を気にしないといけないのは、唯一このメーカーの商品だけではないかなと思います。
元の部屋は畳です。6畳あります。画像の右側にはエアコンと換気扇がありますので、それを塞がないように、部屋の真ん中あたり防音ブースを設置することにします。右側に十分なスペースがないと、エアコンや換気扇が壊れたときにとても困ります。
注意点としては、防音ブースのドアを開いた状況を想像し、ドアが壁やエアコンと干渉しないようにします。
防音ブースを設置する部屋は各位の問題ですのでここではささっと次に進みますが、お問い合わせいただいた場合は、各位の状況にあわせて防音ブースの配置を検討します。
畳の上にニードルパンチカーペットを敷いて、その上に針葉樹合板を敷いています。畳がところどころ凹んでいましたので、防音ブースの重みを面で受けるために補強しました。
合板サイズは1820*910を2枚並べ、その上に1820*455を組み合わせています。元の部屋では、このサイズが現実的でした。この位置に置けば、ドアの開閉でエアコン等が干渉することはありませんし、エアコンが壊れた場合でも、エアコン修理スペースはとれます。ちなみに、元の部屋の左側には押し入れがあり、こちらも使えるような配置になっています。
30*40*1820サイズの木材を木下地として利用しました。この太さで十分ですし、価格は比較的安いです。ホームセンターでカットしてもらったものをビス止めして組んでいきます。
浮き床構造部分に使う木下地も、防音ブースの床の木下地も、ある程度強度をもたせるために、横向きの木をたくさん使います。クランプを使いつつ、つなげていきます。
木下地ができたら、不織布で覆っていきます。この木下地の隙間にグラスウールを詰めますので、それが散らばらないように不織布で蓋をします。
その後、木下地のジョイント部分に均等に防振ゴムをつけています。
先ほどの木下地をひっくり返し、グラスウールを詰めます。袋に入ったタイプのものより、むき出しのものを使うほうが楽です。
上面にも不織布を貼り、また均等に防振ゴムをつけます。これで浮き床構造部分が完成です。
ここまでの構造をおさらいすると、
(上)
防振ゴム
木下地とグラスウール(不織布で上下を覆う)
防振ゴム
針葉樹合板
ニードルパンチカーペット
畳
(下)
となっています。
防音ブースの床を作っていきます。木下地の作り方は先程と同じです。その木下地にラワン合板を貼ります。さらにその上に針葉樹合板を貼ります。画像はその状態を裏返したものです。
木下地に対して、片面2枚の合板を貼っています。合板のつなぎ目が互い違いになるように、目違い貼りをします。
この構造をまとめると、
(上)
木下地
ラワン合板
針葉樹合板
(下)
となっています。
防音ブースの床の木下地の間にグラスウールを詰めます。
その上にポリシートを貼ります。通常、部屋を作るときはグラスウールに湿気を通さないように防湿シートを貼ります。
今回制作する防音ブースは室内に置くわけですが、中に人間が入るので湿気がこもることが予想されます。そのため、気休め程度ですがポリシートを貼っているわけです。本当は壁、天井、床を丸ごと包み込むようにポリシートを貼りたいところですが、防音ブースの設計上それは難しいので、まずは床のみポリシートを貼っています。
その上にラワン合板を貼ります。
さらにその上に、針葉樹合板を貼ります。
これで防音ブースの床は完成です。
防音ブースの壁を制作していきます。右の画像を見ると、木下地の間に配置されている間柱に相当する木が、互い違いに奥と手前にずれていることがわかります。これが簡易千鳥間柱です。
壁が自立するように、先ほどの木下地を左右の壁の木下地と組んでいきます。防音ブースの奥側は人が入れるスペースがないので、外側の石膏ボードと針葉樹合板を貼った状態で、定位置に移動させます。
ちなみに、画像は手前の木下地に対して、外側の壁を貼り付けた状況です。
壁の構造をおさらいすると、
(外側)
針葉樹合板
石膏ボード
木下地とグラスウール
石膏ボード
針葉樹合板
(内側)
です。
防音ブースの壁は奥から順次組んで聞きます。左の画像では、防音ブースの左の壁、奥の壁、右の壁とドア部分、これらを組んでいるところです。
右の画像を見ると、千鳥間柱が石膏ボードに対して互い違いに浮いたり密着したりしていることがよくわかります。
グラスウールを充填し、ポリシートで覆います。
前述のように、かべ、天井、床を一体として包むようにポリシートを配置できませんが、仕方がありません。
まだ壁を全面立てていませんが、奥側の壁に内壁を貼っていきます。画像を見ると、既にドアも完成しています(右側の取手が付いている部分)。
通常、ドアはドア枠を設置し、それに合うようにドア部分が作成されます。今回のDIYでは、ドアも壁も同じ構造で同じ配置をしています。ドア部分の補足は後ほど行います。
さて、ここから防音ブースの壁の制作後半戦です。結構考えて組んでいかないと、DIYでは大変になる箇所です。
まず、天井の材料となる、「針葉樹合板」、「石膏ボード」、「木下地とグラスウールを石膏ボードとポリシートでサンドイッチしたもの」、「針葉樹合板」を、2面分だけ壁の上に載せます。順番通りに載せていかないと、後々天井を組み上げることができません。
そして、この後に立てる壁の内壁となる「針葉樹合板」と「石膏ボード」、をスペース内に全て入れます。
防音ブースの手前側の壁を組み終わりました。先にドアを組んでいますので、ドアが開くように、この手前の壁の位置を微調整します。
先程、今後配置する内側用の針葉樹合板と石膏ボードを予めスペース内に入れていますので、搬入の煩雑さがなくなり、今後の作業が楽になります。
壁の内側からグラスウールを入れ、ポリシートを貼り、石膏ボードと針葉樹合板を貼ります。
壁が全部組み上がったら、ドア部分の内側に「柱兼戸当り」の木枠を取り付けます。
この木枠により、ドアの左右の壁を固定し、ドアがきちんと開閉できるよう調整しています。また、この木枠はドアに代わり天井を支える柱にもなっています。
これで、防音ブースの壁は完成です。
壁に積んでいた「針葉樹合板」、「石膏ボード」、「木下地とグラスウールを石膏ボードとポリシートでサンドイッチしたもの」、「針葉樹合板」をハノイの塔のような感覚で移動させ、1枚ずつ壁の木下地に固定していきます。
本来は、在来工法のように木下地を全部組み上げた後、外側も内側も壁を貼っていくほうが遮音性能の観点からは有利なのですが、なにぶんDIYということで1人でも施工できる方法はこれしか思い浮かびませんでした。
ツーバイフォー工法でも、天井の外壁を貼った状態で壁の上に載せ、後から内壁とあわせて天井の内部も貼っていく方法を採ることが多いですが、壁や天井の木下地の歪みにより内壁用の石膏ボードや針葉樹合板をかなり加工しなければぴったり収まらないため、作業が大変です。
ここで紹介している手順であれば、天井と壁との間に隙間がある程度できますが、簡単に施工できます。隙間は変成シリコンで埋めてしまえば問題はほとんどありません。
最後に、一番手前に1820*455の天井を載せて、天井部分の完成です。
ここまでの流れで防音ブース自体は完成しています。ここからは調整部分です。
まずは、給気口、排気口、配線用の穴を開けます。これらの穴は好きな場所に開ければ大丈夫です。目安としては、給気口はエアコンに近い壁の下の方、排気口はその対角に位置する上の方が望ましいです。防音ブース内は冬でも暑いので、効率よく冷風を取り込むことをメインに穴の位置を決めています。
ドアは壁と同じ作り、同じ配置であり、ドアの手前の木枠が天井と壁の支えになっています。ドアは壁と同じく、床に立っている状態で施工したため、天井と床との間にほとんど隙間がありません。
そこで、ある程度自然に開閉できるように、ドア部分を削らず、上と下にあたる天井と床の針葉樹合板をヤスリで削って調整します。
戸当りの密閉にはエプトシーラーを使います。ちなみに、グレモンハンドルを使わなくても、ドアは自重とエプトシーラーで密閉できます。
防音ブース内にエアコンを設置するのは避けたいので、元の部屋のエアコンから冷風を取り込みます。
吸音ダクトで防音ブースとエアコンを繋ぎます。
換気のためにも、冷房を効かせるためにも、排気口は必要です。こちらも吸音ダクトを繋ぎます。そしてその先にダクトファンを繋ぎます。
これで防音ブースの制作は終了です。これくらいの規模の防音ブースの制作で、材料費はだいたい20万程度、制作日数は10日くらいだと思います。この状態では防音ブース内はかなり音が響く状態です。別途、内装(吸音等)を行う必要があります。
いかがでしょう?DIYできそうでしょうか?これくらいの広さと性能であれば、大手メーカーのユニット防音室では本体だけで200万ほどします。おそらく設置費用でもう少しかかると思います。それに比べるとかなり安くすみましたね。
このDIY防音ブースの唯一のデメリットは、大手メーカーのユニット防音室のように、解体移設に対応していないということです。無理やり頑張れば移設できるとは思いますが、引越し業者に運んでもらうわけにもいかないので、色々考えないといけません。また使っている石膏ボードも一度解体するとボロボロになりますから、そのあたりはどうしても買い直しが必要です。その分、市販のものより安くできますし、また性能は少し上です。
もし興味があり、自分でも作りたいという方がいましたら、お気軽にお問い合わせいただければ、疑問等にお答えします。ここでは大まかな流れを書いただけですので、細かいことは個別対応とします。なお、ご連絡なくこれを参考にご自身でDIYされ、何かしらの損害を追われたとしても当アトリエは一切関与いたしません。また、当サイトにある情報の転載はお断りいたします。