ミックスに不慣れなうちは、周波数毎に音を判断することが難しいと思います。また、ヘッドホンでミックスをしている場合、パンの判断も難しいと思います。そこで、今回は手っ取り早く楽曲の周波数に対する感覚を構築する方法を紹介します。
有料プラグインとしては、MetricABが有名かと思います。役に立つ立たないは別として、チェックできる項目は多いです。TruePeakもチェックできます。同じようなことは、無料プラグインでもできます。むしろ原始的なやり方な分、こちらのほうがわかりやすいかもしれません。
ミックスをやる場合には必ず参考となる曲をDAWに読み込んでください。自分が制作したトラックの一番上などに置いておき、自分が作った曲とリファレンスをソロボタンで切り替えられるようにすると便利です。
ルーティングとしては、自分で作った曲のルーティングの最後にPre Masterを作り、そこからMasterに送ります。一方、リファレンス曲は直接Masterに送ります。こうすることで、それぞれをポチポチ切り替えることができます。
この際、ミックスの最初から自分の曲とリファレンスの音量を揃えるようにしましょう。著者の場合は、ベースかキックを何dBで固定させておき(例えばキックを-10dBなど)、それを基にリファレンスの同じ楽器の音が同じくらいになるように音量調整をします。リファレンス曲はミックスもマスタリングも終わった後の状態であり、自分の曲はこれからミックスを行う状態です。まずはこの音量設定がミックスの道しるべとなります。
リファレンストラックのボリュームフェーダーだけでなく、プラグインでボリュームフェーダーが付いているものをインサートして、「自分の曲に音量を合わせたときに何dB下げたか」を気にしてみてください。最終的に自分の曲の音量をリミッターで大きくしていくと思いますが、その際にどれくらい持ち上げればよいか、完成形の差がどこで生まれているか、などが掴みやすくなります。
Cubase付属のmultiband envelopeshaper(あるいはmultiband compressor)
実際にエンベロープを調整する使い方ではなく、周波数帯でのソロボタンを使いたいため利用します。
楽曲全体で聴くと捉えにくいものでも、周波数を限定して聴けばわかることもよくあります。周波数への感覚がよくわからない初心者のうちは、このチェック方法を多用するようにしましょう。
同じことができるプラグインはたくさんあると思いますので、お使いのDAWで利用できるものを選んでください。
このプラグインは、MidとSideに信号を分けることができます。特にSideの広がりをチェックする際に有用です。
こちらも同じような無料プラグインは別にありますので、お好きなものを選んでください。
この2つのプラグインを組み合わせれば、MidとSideの信号を限定した周波数帯で確認することができます。例えば、リファレンス曲に対して、MSEDをSide、Multiプラグインで100Hz以下をソロにして聴いてみると、低音がほぼいなかったりすることがあります。そして周波数を上げて確認していくと、Sideにも成分が出現し、どの周波数帯で量が多いのかなどが簡単に視覚的にも確認できます。
また、MSEDはMidもSideも出して(あるいはオフにして)、Multiプラグインで周波数帯を限定した状態でステレオイメージプラグインを使えば、視覚的にもステレオの広がりを確認することができます。MSEDにも右の欄にステレオイメージが表示されますが、他の無料プラグインでも様々な表示方法のものがあるので、それを活用するとよいです。
TT DR Offline Meterなど
オンラインなら、https://lufs.org/、など
無料プラグインでは書き出した後にしかチェックできないと思いますが、楽曲のTrue PeakやDR(ダイナミックレンジ)をチェックする方法があります。
こちらもミックスやマスタリングの初心者のうちにたくさんの市販曲を聴いて、さらにこれに読み込んで、どういう状態になっているかを分析していくとよいです。
その他、DAWのMasterにRMSメーターをチェックしたり、EQを入れて(パラメータ操作をせずに)周波数特性を比較してみたりするのもよいです。
トピックとしては、例えば1つの楽器のトラックをみたときに、ピークとRMSの開きをチェックしてみるのもよいかもしれません。他には、周波数特性の特に傾き(水平か高音がどれだけ下がっているか)をみつつ、実際の音とどのように差が出ているかを気にしてみるのもよいかもしれません。
もう少し進んだこととして、こういう方法とテストトーンジェネレーターを組み合わせて利用すれば、各種プラグインの効果や動作確認などもできたりします。この方法を使っているうちに、「あ!あんなこともできそう!」みたいな発見もあると思いますので、ぜひ活用してみてください。