サブウーファーを導入したり、下が40Hz程度出るスピーカーを導入した場合、現在の住環境では制振が必須になります。なお、隣の家まで50m以上離れているくらいの郊外であれば、とくにご近所迷惑を考える必要はないかもしれませんが、集合住宅や木造一戸建てで隣とほぼくっついているようなお宅であれば、ちょっと音量を出せば低音がご近所に聞こえてしまい、迷惑になっていることと思います。また、ご近所迷惑でないとしても、ホームスタジオの響きの調整は大変であり、低音を適切に響かせることは難しいです。したがって、ニアフィールドでDTMをする場合は、まずはスピーカーの制振ありきで考えます。
オーディオファンの人たちが、インシュレーターにこだわったり、制振をしすぎると音が痩せるというようなことを言ったりしますが、制作においては直接音を中心に聴くことができれば問題はありません。
さて、スピーカーをワイヤーで吊り下げることをしない場合、スピーカーを置く台が必要になります。そうすると、スピーカーの振動はその台に伝わり、一緒に鳴ります。そのため、スピーカー台についていろいろ言われたり、スピーカー台への振動を制御するためのインシュレーターがいろいろ言われたりするわけです。この観点から言えば、これまでの記事を参考にすればスピーカーはスチールラックの上に置いていると思います。実はこれは理想的な状態です。スチールラックの鳴りさえ抑えてしまえば、スピーカーの振動を邪魔するものはありません(この段階ではスピーカーもスチールラックも十分振動しているということです)。
ただし、低音については音波としても個体振動としてもエネルギーが強いので、スピーカーからスチールラックへ、スチールラックから床へ、それぞれ振動が少しでも伝わらないように積極的に遮断します。これに最適なのが、ゴム系の制振材です。一般的に浸透しているところで言えば、ハネナイトと呼ばれるインシュレーターはスピーカーの低音のぼわぼわした膨らみを抑えてくれるので人気があります。実は、工業世界ではそれよりも強力な制振材がありますので、それをここでは紹介します。
エクシール ゲルダンパー 防振・緩衝ブロック 赤 50×50×25mm厚 GD01-33004
1つで1500円くらいです。4つ購入し、サブウーファーの下に敷きましょう。振動体であるサブウーファーに近い位置から振動を順次遮断していくとよいので、サブウーファーの下に直接敷きます。
このゲルダンパーは23.8Hzまで制振してくれます。よって、サブウーファーにぴったりなのです。赤が一番対応できる周波数が低いです。
この下には、御影石などの重たいものを経由してもいいですし、直接スチールラックでもいいです。そして、スチールラックと床の間にも、制振ゴムを敷くとよいです。ここの制振ゴムには、このゲルダンパーほどのよいものを使わなくても問題はないです。
東京防音 オーディオ用インシュレーター 極厚 THI-500 50mm×50mm×厚17mm 4個入
ハネナイトは一般的にスピーカーのインシュレーターとして導入されているので、導入実績は多いです。
ゲルダンパーと違い、適応周波数範囲も広いので、メインスピーカーのスチールラックとの共振を抑えるぶんには、これで十分かと思います。
一応、これをメインスピーカーの下に敷くと、音像は見やすくなりますが、音の奥行きなどの立体感は犠牲になります。もし、メインスピーカーの低音が気にならない場合は、スチールラックとの間に何も敷かないか、薄手の滑り止めゴム敷くくらいでもいいかもしれません。
メインスピーカーの低音はサブウーファーにまかせているはずですので、そこまで問題になるほどの低音は出ていないはずです。
(株)エクシール 防振・緩衝ブロック ゲルダンパー 緑 50X50mm GD50-50
ゲルダンパーの緑です。赤よりも少し安いので、メインスピーカーが大きい場合は、これを使ってもよいかもしれません。
しかし、ゲルダンパーが制振する周波数は低音に偏っています。したがって、とくに問題がない限りは、対応する周波数範囲が広いハネナイトをまずは試してみるとよいです。
中高音は自由にし、低音だけ選択的に制振したい場合の選択肢です。
今日のスピーカーシステムにおいて、サブウーファーを導入しない選択肢はありません。そうすると、100Hz以下の低音をどう処理するかが問題になります。リスニングにおいては、ルームチューニングをしないと低音が暴れてしまい、正常なモニタリングができません。また、集合住宅においては、確実に低音だけ建物を伝搬し、誰かの迷惑になっていることと思います。
どこかの記事にて既に述べたと思いますが、かつてはスピーカーにより部屋も十分振動させてその一体となった音を振動とともに聴くことが一般的でした。そのため、ルームチューニングがとやかく言われましたし、所詮ホームスタジオレベルでは十分なルームチューニングはできないというのが一般的な結論でした。
しかし、現在、ニアフィールドでモニタリングすることが優勢となり、この場合はそこまでのルームチューニングを必要としないことがわかっています。さらには、補正ソフトにより個別の部屋の問題も大幅に軽減できます。つまり、まずは低周波の振動をできる限り抑え、そしてニアフィールドで聴く状況を整え、最後に補正ソフトでチューニングします。ここまでの当アトリエの記事を見れば、ニアフィールドリスニングでも問題になるルームアコースティックは解決しているはずです。後は、余分に導入する吸音材の量で残響を調整すれば、ほぼすべての音の問題は解決します(実はまだ解決しない問題はあります。100~150Hzあたりにできるディップですね。これはまた今度紹介します)。