皆さんはコード譜を見ることはありますか?よく活用するよという方は、ネットにあるコード譜や歌本を参考にされていると思います。ネットにあるコード譜は、基本的に歌詞とコードのみが書いてあるシンプルなものです。歌本の場合は、それにメロディの音符やテンポ、キーなどが記載されます。
さて、これらを見て便利だと思いましたか?私は使いづらいなぁという印象でした。まず、ネットにあるコード譜にはリズム情報が書いてありません。コードチェンジのタイミングも曖昧でわかりにくいです。歌本の場合は、メロディが音符で書いてあるため、慣れた人にはコードチェンジのタイミングもリズムもわかるのですが、一瞬で把握するのは難しいです。音符という古い表記方法は、音符の種類によって音の長さの情報をもたせるという方式を採っています。そのため、音符が細かくなる小節と音符が少ない小節とでは、小節のサイズが異なります。これもまた、楽譜に不慣れた方にはとっつきにくいものです。
前提として、なぜコード譜を見るかというと、その曲を歌い、演奏したいからですよね。ですから、上記のようなリズム情報がない、あるいはわかりにくい表記ですと、なかなかリズム感が養われません。
もう1つの問題として、日本語の曲はモーラ構造の関係上、母音の位置の問題で歌がかっこ悪く感じがちです。モーラ構造の関係というのは、簡単に言うと、1つのリズムに1つの発音(子音と母音)を当てはめるしかないのが日本語ということです。例えば、「マクドナルド」という単語であれば、日本語の場合はアクセントが強くなるポイントが6つあります。マ・ク ・ ド ・ ナ ・ ル ・ ドというように、各文字すべてに母音で強くなるわけです。一方で英語の場合は、McDonald'sはməkdanldzというように、2つだけ強くなるポイントがあります。これを歌に当てはめると、1つ1つの音符に歌詞を入れていった場合、日本語は6つ音符が必要であり、英語は2つ必要という感じになります。したがって、日本語の曲は歌詞の意味もこだわったりなんかしますと、なんか野暮ったい感じに聞こえます。英語のように、1つの音符に複数の文字を当てるほうがかっこよく感じてしまうんですね。
この問題を回避するために、日本語の曲でも、1つの音符に複数の文字を詰め込むようになりました。ただし、マ・ク ・ ド ・ ナ ・ ル ・ ドのような、強い音感の文字列を1つの音符に入れようとしても、複数の母音が邪魔をしてぎこちなくなってしまいます。ですが、例えば、「くらい」「ふあん」「きょう」「よう」など、1つの音符に入れてもしっくりくる文字列もあります。まあ、せいぜい3文字程度であり、弱く発音できる母音が混ざっている場合ですね。
この話になんの意味があるかというと、日本語で歌詞を載せる音符のほとんどは、8分音符や16 分音符であり、 最近の曲はそこに複数の文字列を当てるため、拍節を常に把握した状況で歌おうということが言いたいわけです。つまり、コードチェンジと歌詞のタイミングとリズムが見えるコード譜でなければ、なかなかリズム感を捉えにくいというわけです。
これを回避するために、手間ではあるのですが、好きな曲はここで紹介するコード譜を作ってみてください。このコード譜を見ながら歌ったり、演奏したりすれば、音感もリズム感も養われます。
これはMrs. GREEN APPLEさんのライラックという曲です。コードと歌詞を記載しています。4/4拍子の曲なので、各小節には4つの箱があり、1拍分が4分音符です。その1拍の箱の中に、2つ分のスペースがありますね。つまり、このスペース1つが8分音符分です。この曲に関わらず、多くの曲が8分音符より大きい拍の位置でコードチェンジします。この曲はコードチェンジのタイミングが細かい方です。
ここに歌詞も入れています。見てみると、1つの拍に文字が1~3個程度割り当ててあることがわかります。このように、1つの音符に複数の文字をごちゃっと入れるのが、現在ではかっこいいわけです。
いかがでしょう?このコード譜は見やすいと思いませんか?イントロ部分のコード進行もきちんと拍節がわかりますし、小節の表示が伸びたり縮んだりしないので一定リズムを把握しやすいと思います。そして、どの音にどの文字列が押し込まれているかもよくわかるので、このコード譜を見ながら歌を歌えば、その曲の歌詞と曲のリズムが体に入ってきやすいです。ちなみに、このコード譜だと、「どこに文字が入っていないか」もよくわかります。これを感じることも大切です。
Bメロの開始地点では英単語が入ってきます。英単語のほうが1つの音符に当てやすいことがわかってもらえたでしょうか?この歌詞のタイミングと譜割り、コードチェンジのタイミング、こういったものを体で感じながら歌の練習をするととてもよいと思います。
歌の練習をするためのコード譜としては、こんな感じの表記が優位だと思います。メロディが知りたい場合は別途歌本を見ましょう。むしろ、 メロディは音符を見るというよりも、元曲の動画や音源を聴きながら真似する ことをおすすめします。このコード譜は 歌詞カード感覚で利用するのにも便利かと思います。
メロディをこのコード譜に入れようとすると、このコード譜の良さを潰してしまうことになりますので、それぞれを分けて利用することを推奨します。
紹介したコード譜はExcelで作成したものです。コードも歌詞も耳コピしなくても、両方をネットや歌本を参考にして書き出すだけでも十分かと思います。ただし、難しい曲の場合は採譜者によってコードが違っていたりしますから、自身で耳コピしてみるのもよいと思います。
このコード譜の優位点はとにかくリズムを見やすくしたことに尽きます。
このコード譜のデメリットは、とにかく作ることが面倒だということですね。ネットにあるコード譜や歌本は既に誰かが作ってくれたものですから、このコード譜の場合は自作しないといけません。ですから、たくさん数を作るというよりも、これぞという好きな曲だけ作って練習するとよいと思います。
© 2014–2025 Atelier Phonethia All rights reserved.