ネットを見ると、スピーカーはツイーターを耳の高さにあわせて、水平に設置するという記事が多くあります。結論から言えば、スピーカーの上下方向は15°までの範囲で傾けましょう。優先順位としては、「耳より少し高く設置して下に傾ける」>「耳より少し低く設置して上に傾ける」>「耳の高さに設置して水平にする」です。
まず、水平設置の問題についてです。高音は鋭い指向性で前に飛んできます。これはリスナーに対し左右の壁や後ろの壁から跳ね返って、リスナーの耳に到達します。つまり初期反射というやつです。水平配置の場合は、初期反射も最短距離の水平で返ってくる分が強いわけですから、高音が濁りやすくなります。メリットとしては、作業中に椅子のキャスターで多少移動しても、耳の高さは維持されているわけですから、スイートスポット内に耳が収まりやすいです。ですが、1人で作業している場合や、あまり移動しない場合はこのメリットはあまりないので、水平配置はあまりおすすめできません。特に、6畳以下の作業スペースの場合は、各方位の壁が近いはずですから、モロにデメリットを受けてしまいます。吸音材を使っても、多少軽減されるだけで返ってくるわけですし、そもそも音は3Dなので単純経路では思いつかなかった方向から反射してくることもあります。ですから、根本的にスピーカーに傾きをつけて反射経路を複雑にするほうがよいです(通常、部屋が長方形であり、平行面ができることが問題です)。
次に、耳より高く配置して下に向ける設定についてです。これはよくメーカーサイトで推奨されています。2Wayスピーカーなど、同軸ではないスピーカーは、ツイーターのちょっと下辺りでスイートスポットができるように設計されています。ツイーターとウーファーが別れていますので、その間くらいにスポットがくるようになっているわけです。したがって、そもそもツイーターを耳の高さより上げたほうが設計の観点からも効果的です。また、ほんの少しですが、机からの距離が延びるので、机の初期反射がほんの少しだけ少なくなります。上下方向の角度もついているため、初期反射の距離も延びます。その結果、高音がすっきりしやすくなります。デメリットは、おそらく机の上に置いてあるであろうPCモニターよりも上から音が聞こえるということです。例えば映画なんかを見ている際はPCモニターの映像からではなくもう少し上から音が聞こえることになるので、音の到来方向に違和感があるかもしれません。ちなみにPCモニター自体は、目の高さよりも下げて設置することが推奨されています。ですから、こういった作法を守ると、映像と音が分離してしまうわけです。あとは、水平配置よりもスイートスポットは狭くなります。
最後に、耳より低く配置して上に傾ける設定についてです。これは2つの考え方の間にある設置方法です。スイートスポットは傾き次第でなんとでもなりますし、机での反射については、机としてスチールラックを使っていれば結構回避できます。メリットは目よりも低いPCモニターと同じくらいの高さに設置できますから、映像と音の位置が一致します。デメリットは、スイートスポットがかなり狭いということです。音は高い位置から聞こえるほうが聞き取りやすいという特徴があります。ですので、同じ傾けるとしても、耳より高い位置から下に傾けるほうがきれいに聞こえます。
これらの選択は好みです。狭い部屋では水平配置のデメリットが大きいため、避けたほうが無難という程度です。広い部屋の場合や単純な長方形の部屋でない場合は、水平にするのが一番よいでしょう。狭い部屋の場合は、残り2つの設置を両方試し、好みの方を選んでください。