皆さんはスピーカーを使っていますか?ヘッドホンで音楽を聴いていると、なかなかミックスするのに必要な感覚は養われません。スピーカーではなくヘッドホンでの音楽を聴くということは、画像で言うと、24bitの色表現が256色に見えているような感覚です。
ヘッドホンで行ったミックスはいびつです。自身でミックスまでをやりたいと思うのであれば、スピーカーの使用は避けては通れません。そして、さらに現在ではサブウーファーの使用も必須です。ですから、スピーカーを使っていないのであれば、すぐに使い始めるべきです。集合住宅だからサブウーファーを使うのを躊躇している方は、別途サブウーファーのセッティングに関する記事を挙げますので、そちらを参考にしてください。サブウーファーは、基本的に部屋を震わせて、その低音を感じることを目的とした設計思想になっていることが多いです。そのまま使うと近所迷惑になりますので、ニアフィールドでは十分に制振して使用します。
さて、スピーカーは世の中にたくさんありますが、正直なところ、選択肢に挙がるものは少ないです。なぜなら、「同じ金額だったら100%こっちを買ったほうがいい」というように、買う価値があるものが絞られてくるからです。この記事では、当アトリエがおすすめするスピーカーを金額順に紹介します。日本で買いやすいものに絞っています。なお、ここで挙げなかったスピーカーのマイナスポイントをあえて言及することはありません。
JBL ( ジェービーエル ) / JBLスタジオモニターセット 305P MKII +LSR310S(306P、308P)
15万円以下はもうこれ一択です。記事執筆時は、サブウーファー込みで65,800円です。セット販売していますので、何も気にせずこれを買いましょう。もし余裕があれば、305Pではなく、306Pを、さらに余裕があれば308Pを選ぶとよいです。ただし、308Pはセット販売はしていないので、ちょっと高くなります。でも、308P>306P>305Pです。
最近、DSP搭載のスピーカーが登場していますが、このセットを買って、補正ソフトを別途買って補正してください。そのほうが得るものは大きいです。というわけで、305Pセットに補正ソフトも入れれば、10万程度になります。
GENELEC ( ジェネレック ) / 7040APM +8010AP
サブウーファーが12万、8010APがペアで7.5万ほどです。合計20万程度です。補正ソフトを入れるともう少しかかります。JBLのセットから金額が跳ね上がりましたが、それだけJBLのセットがコスパよいということです。正直、このセットとJBLのセット、どっちがいいということは言えません。
明確に聴き比べたわけでないのですが、GENELECの明瞭さ、定位感、聞いたことがある感じ、というように考えていくと、このセットは十分選択肢に入ります。
8010ではなく8020にしてもいいですが、結構値段が上がるので、それを考えるくらいなら8320+7350に行くことをおすすめします。
GENELEC ( ジェネレック ) / 8320APM+7350APM 2.1ch GLM Studio
35万のセットです。GLMという補正キットがセットになっています。
今後、スピーカーをイマーシブ環境に拡張したり、スピーカーを上位グレードにすることを考えると、一旦このセットに落ち着くのがコスパいいです。
基本的に、おすすめするのはここまでです。
GENELEC ( ジェネレック ) / 8020DPM+7050CPM 2.1ch Studio
27万のセットです。サブウーファーは7040ではなく、1ランク上がります。8020と7040とを単品で買うのとこのセットを買うのとで、ほとんど値段が変わりません。そのため、これを買うのがお得です。8030CP+7050CPMであれば、30万です。
そうなってくると、もはやGLMセットが視野に入ってきます。ですので、GLMセットが登場した現在では、選外になります。
NEUMANN ( ノイマン ) / KH80 DSP A G +KH 750 DSP D G
これに測定用マイクMA1を入れると、45万です。元々、GENELECの8320+7350と同じく35万でしたが値上がりしました。
ということで、日本においては、8320+7350を買うほうがコスパがいいです。品質は8320+7350よりちょっといいとされていますが、大差はありません。
35万であった時期は選択肢に入りました。現在の状況では選外です。
GENELEC ( ジェネレック ) / 8050BPM
ペアで48万ほどです。単体で30Hzほどまで出ます。ですが、ホームスタジオでスピーカーを導入する場合は、ニアフィールドかつGLMで補正することを考えたほうがいいです。
現在では、体験としては2.1ch GLM Studioより一歩劣るように思い、選外にしました。ですが、中古で見つけたときは検討する価値があります(きちんと状態を判断してください)。
ちなみに、8350がペアで60万しますので、こちらは論外です。この金額を出せば、次の世代が視野に入ります。
NEUMANN ( ノイマン ) / KH 120 II EU/KR +KH 750 DSP D G
これに測定用マイクMA1を入れると、57万です。KH80を買うなら、こっちを買いましょう。
もちろん、GENELECの8320+7350よりも音の立体感、定位感、キレ、などは1ランク上です。GENELECではなくNEUMANN環境を選ばれる場合は、これを上限としていいと思います。
NEUMANN ( ノイマン ) / KH 150 EU/KC +KH 750 DSP D G
これに測定用マイクMA1を入れると、80万ほどです。
はっきり言って過剰であり、120Ⅱで十分です。どうしても最高のものがほしい方に限り、120Ⅱと聴き比べた上で選んでください。この上に310や420がありますが、それはもはや不要であり、持て余します(ニアフィールドでは厳しいです。どうせ大きくしていくなら、GENELECの同軸に行ったほうがいいです)。
GENELEC ( ジェネレック ) / 8341AP +7350
サブウーファーをセットで考えると100万を超えてしまいます。ちなみに、8331を買うくらいなら8341を買うほうがはるかによいです。
同軸の魅力は聴いてみないとわからないと思いますが、ニアフィールドであっても、スピーカーをそこそこ大きくできることが最大の魅力だと思います。
8351もいいのですが、最近取り扱う小売店がなくなっており、買いにくくなっていますから、今買うのであれば8341がいいと思います。
結局、ここに挙げたものは、JBL、GENELEC、NEUMANNだけでした。逆に言えば、これ以外におすすめするスピーカーはありません。もちろん、好みの問題もありますので、各自好きなスピーカーを選べばいいです。ですが、もしお気に入りがなければ、ここに挙げたスピーカーを選ぶのが堅実です。
まず、JBLから挙げたスピーカーはコスパが凄まじいです。はっきり言って、もう少し上のランクのスピーカーと張ります。ですから、あの価格帯でJBLに勝てるスピーカーはありません。ただし、個体差や初期不良がよく報告されているので、購入後、最初だけ入念にチェックしてください。多くの方は308P+LSR310で十分であり、ここが到達点となると思います。
次に、GENELEC。GENELECはサポートが手厚く、GLMは優秀、スピーカー自体も性能よし堅牢性よし、メーカーの信頼性も高いという、言うことがないメーカーです。さらに、もうどこのスタジオに行っても何かしらGENELECスピーカーはあります。ですから、聞こえの傾向として、GENELECに慣れることすら意味があります。迷ったらGENELECを買えばいいです。JBLのセットで満足できない場合は、多くの方はGENELECを買いましょう。8320+7350は、ホームスタジオの最終形だと思います。
最後に、NEUMANN。これは元々、Klein & Hummelというメーカーでして、現在はNEUMANN傘下になっています。一部界隈では、同価格帯のGENELECよりも性能がよいする意見もあります。具体的に言うと、KH80やKH120Ⅱですね。ですが、当初より、DSP補正システムであるMA1のバグを長年放置したり、MA1自体の性能がGLMに及ばなかったり、サポート体制の質、大幅な値上げ、などにより、家庭用としてはいいが業務用としては導入は難しいと判断しました。ただし、2025年現在は、バグ等も大幅に解消されたようです。もし、いまからスピーカーを検討するのであれば、選択肢に入ると思います。音のクオリティはもちろんよく、正直なところ、GENELECとNEUMANNの2強なので(GENELECのほうが優位)、ホームユースであれば好きな方を選べばいいと思います。スタジオユースであれば、やはりGENELECを選ぶほうが安心だとは思います。
まずは、JBLの上記セットをお店に聴きにいってみてください。305P、306P、308PとLSR310の組み合わせを全部、そしてGENELECの8010+7040、8320+7350。もし聴けるなら、おまけでNEUMANNのKH80+KH750あたりを聴かせてもらうといいかもしれません。JBLで満足できるならそれ一択、もの足りないならGNELECの8320+7350にいくことになると思います。8010+7040は中途半端に高額になるので優先度は下がりますが、中古市場で比較的値が落ちやすいので、狙ってみるといいかもしれません。