音楽の学習をはじめたとき、何から勉強しましたか?音楽の構成要素も把握していない状況でDAWとにらめっこしても、正直まともな曲は作れません。西洋音楽を基盤とした今日よく耳にするような曲を作ろうと思ったら、それを作るためのルールに従う必要があります。ただし、理論の勉強の前に1度手を動かして「行動してみる」ことは大切です。
このようなプロセスを自分で経験していれば、自然とコード理論を学習しようとするはずです。本来は理論は後づけ的な立ち位置ではあるのですが、手軽に音楽を作るためには、まずこれから学ぶことで効率よく技術が習得できます。今日の音楽学習では、小さい頃からリトミックをやってきた人は別として、コード理論を学習していないとある程度の音感は育っていないはずですし、コード理論を学んだベースがない状態で作った曲はチグハグになりがちです。コード理論は実際に使う道具というよりも、学習者の血肉となるような基礎体力にあたるものです。
さて、コード理論を学ぶ際には鍵盤を使って実際に音を出そうという話は過去にしました。どうやって学習を進めていくかについては、ポピュラー音楽系かジャズ系の参考書であり、かつ薄い本を最初に選ぶとよいです。ちなみに、クラシック系の和声の本を最初に学ぶとそこそこの遠回りになります。決して、内容が劣るというようなものではなく、作法が違うため実用性が低いという感じに思ってください。もちろん、載っている要素自体は参考になるものですし、そのうち結局習得することにはなるのですが、最初にやると学習効率が下がります。イメージとしては、これを最初に学習しても、歌モノとしては童謡のような曲しか作れない、かもしれない感じです。オーケストレーションの下地にはよいので、BGMを作りたい場合はむしろ和声からスタートしてもよいかもしれません。ここではポピュラー音楽としての歌モノを作る前提で話を進めますね。
コード理論の学習は、最初にダイアトニックコードを学習し、その後は使えるコードを増やしていくような流れで構成されています。そしてある程度使えるコードが増えたら、次にテンションやスケール(モード)を付け足し、コードとスケールによって自由にセンテンスが作れるようになっていきます。その流れの中で調性感覚が身につき、コードやスケールの選択により調性をふらふら行ったり来たりして調整できる感じになります。
ですので、学習イメージとしては、大きなジグソーパズルの端っこからちょっとずつ作っていって最終的にパズルが完成するような、「続きものの学習」になっています。参考書では1要素ずつ順番に紹介されていると思うのですが、これを断片的な知識として学ばず、必ず全体を把握するようにしてください。学習しているのはジグソーパズルのピース、達成したいのはジグソーパズル全体の景色、なわけです。実はですね、参考書でこのように学習した最終形である「ジグソーパズルの全体像」がまとめてあるものはありません。少なくとも私は見たことがありません。そのため、学習するにつれて自分で作成する必要があります。
具体的にどうすればいいかと言うと、参考書で学んだ断片知識を自分のノートに書いてそれらの関係性をまとめること、これがとても大切です。それにより、最終的に完成した1枚のジグソーパズル全体像があなたの手元に残ります。後は、この全体像だけ見れば、コード理論として学んできたすべてのことがすぐに把握できるようになります。そしてそのうち記憶してしまいます。例えの話をすると、数学や物理などで公式を学んだことがあると思います。高校以上になれば、この公式自体を導出することを経験したかと思います。導出はあくまでもそのプロセスを理解していることが大事なわけで、実用的には公式をそのまま覚えてしまって、もう周知のものとして自由に使ってきたはずです。逆に、計算のたびに毎回公式を導出していれば時間がたくさんかかってしまい、面倒くさいですよね。先程のジグソーパズル全体像は、この公式にあたります。曲を作るうえで実際に自由に瞬間的に使える知識というのは、この公式化したものに相当します。そして、反復的に実行して体に染み込ませていくことで、やっと使える知識に昇華します。
まとめると、コード理論学習で大事なことは、学習した断片知識をマージするための自分ノートを作ろうということです。これは、調性感覚を養ったり自由に作曲できるようになったりすることに大いに貢献してくれる強い味方になります。