皆さんは自分の曲を誰かに聴いてもらうことはありますか?そして感想として、「普通にうまい」「破綻なく作れている」「よくできている」と言われることはありますか?
クリエイティブをやる上での段階の話として、それなりにコード理論を覚え、それなりに人の真似をし、たくさん曲を作れば、このような評価をもらう曲がそのうち作れるようになります。では、この先にはどういう領域があるのでしょうか。
「普通にうまい」「破綻なく作れている」「よくできている」という評価は良くも悪くも「普通」ということです。ありふれた状態、雑多、ですね。とりあえずそれっぽい作品だということです。たとえば、どなたかから曲を作ってほしいと頼まれて、作ったものをこのように評価されたらDTMerとしては趣味レベルの上位である、と言われていると思ってください。もし、コンペなどでコメントをもらうとすると、「メロディが弱い」「展開が弱い」「世界観が弱い、わからない」「印象に残らない」なんて言われるかもしれません。おそらく誰しもがこの地点を通過すると思うのですが、音楽を構造的に学ぶことのみに傾倒したり、自分自身で自由に作るだけだったりすると、ここで停滞しやすいように思います。
この先の水準としては、「求められたものに唯一無二で当てはまる」「この曲以外考えられない」「曲が覚えやすくてキャッチー」「引き込まれる」「光るものがある」「tiktokで切り抜かれる」などがあります。つまり、先程の曲とこの曲を2曲並べられた際にほぼ100%こちらが選ばれる、というような曲です。
たとえとしてわかりにくいかもしれませんが、とあるアイドルのための曲の募集があった際に、前者の曲はとりあえず体裁は整っているしメロディもきれいだけど、他のアイドルが歌っていても違和感ないような汎用性のある状態の曲、世界観が踏み込んでいない曲、大きな破綻はないが印象深いものもない、というような感覚です。後者はまるでそのアイドルのためだけに存在しているような曲であり、1回聴いたら脳に刷り込まれる、多少良くない部分もある(わざとつくったり)が突出した良い部分がある、聴いた瞬間にすでにレベル差やクオリティの高さを感じてしまう、消去法で選ばれるのではなくピンポイントで一択で選ばれる、というようなイメージです。
おそらく商業作家の水準では、前者の状況はほとんどなくて、後者だけが流通に乗っています。ここで、前者にいる人はそれに気づき後者を目指すことになると思うのですが、なかなか言葉で対処法を説明することは難しいです。別の言い方をすれば、作家性、作風にめちゃくちゃ偏りを持つ、なにか1つで突き抜ける、このひとに頼まないとだめ、というようなことを具体的にどのように達成すればいいのかなということです。こういう話は第3者から度々言われると思うのですが、なかなか「じゃあ、どうすればいいの?」状態で足踏みしちゃいます。
それでも何かしらやって打開を試みるしかないので、行動療法としては、両者の隔たりに気づいたあとはアニメや実写の映画ドラマのOPを前提に曲をつけてみる、それをもともとついていた曲と比較する、歌うアーティストを深堀りする、などとにかく深く潜るしかないように思います。そうすることで徐々に変わっていくようなものなのかもしれません。そのためには、当然メロディやコードだけの問題ではなくて、歌詞も歌い方も声色も、他のことも、とにかくトータルコーディネートで作っていくしかないのではないでしょうか。すなわち、よく言う詞先曲先とか、メロディが先コードが先とか、作曲のあと編曲とか、曲が完成してからミックスするとか、そういう順序が前提の作り方をしていればどうしても深い作り方はできず汎用的な薄っぺらい感じになりますから、すべてを「同時進行で作る」必要があると思います。おそらく、これを意識して実行するだけで制作物の完成度は大きく変わってくることでしょう。そして、曲を作りながら、曲に引っ張られて勝手に完成していく感覚が大事なのだろうと思います。